トポロジー
はじめまして。
2年生の人です。Twitter (@_ariHira)をやっています。理情で Advent Calender がたったので、せっかくなので文章を書きます。が、ブログ書いたことがないのでむっちゃドキドキしてきました...
位相幾何学
位相幾何学とは
せっかくなので何か書こうと思い立ったのはいいのですが、コンピュータなんもわからんので、数学の位相幾何学について書きます。
位相幾何学(=トポロジー)というのは、2Aの数学科の必修『集合と位相』で習う位相というものについて詳しく調べる幾何の分野です。よくいう、コーヒーカップとトーラス体が位相同型だ、とかいうやつで、ぐにゃぐにゃ曲げると同じ形になるものは同じものとして考えてしまいます。 (ただし穴を作ったり潰したりちぎったりすることを許さない変形に限る)
対象と射
位相幾何学は幾何の分野と言いましたが、数学というものは通常、最初に"対象"と"射" (代数だと主に準同型写像と呼ばれるもの) を定義します。この場合、対象は位相空間で、射は連続写像と呼ばれるものになります。ここでは位相空間の例として、円や球、トーラス、などをあげます。だいたい何かの図形と思っておけばいいです。(ここであげる例は全ての部分空間に限定して、厳密な定義を避けます。)
連続写像の中でも、全単射で、さらに逆写像も連続になっているものを、特に同相写像と呼びます。そして、同相写像で結ばれる2つの位相空間を、同相(位相同型)であるといいます。
この同相の定義が、最初に述べた、ぐにゃぐにゃ変形すると同じになることと対応しています。
EX) 円と楕円は同相
EX) アニュラス(左)とシリンダー(右)は同相 (シリンダーは図の曲面のことです)
(アニュラスは極座標表示, シリンダーは高さと角度の組で表示)
位相幾何学の目標
位相幾何学の目標は、位相空間を同相か同相でないかによって分類することにあります。
位相空間とが同相であることを証明するためには、との間に同相写像が存在することを証明or構成すればいいのですが、位相空間とが同相でないことを証明することは悪魔の証明的に難しくなります。(←ほんまか)
位相不変量
この同相でないことの証明には、位相不変量と言うものが大きな役割を果たします。位相不変量とは、ある位相空間を一つとってきたときに、それに対して決まる数や性質、さらには群などであって、同相な他の位相空間に対しても同じ値になるものを指します。
位相不変量の例
同相ならば位相不変量が等しいという事実は、逆手に取ると、位相不変量が異なるならば同相でないという証拠になるのです。
EX) とは同相でない。もし同相であるならばから一点を除いた と、 からある一点を除いたものが同相にならなければならないのだが、前者は連結でない(連結成分2つ)のに対して、 からどの一点を除いても連結になる(連結成分1つ)ので、これらは同相になり得ないので矛盾する。
同じように と 円周 が同相でないことを証明できます。
球面 とトーラス
この区別は難しい
球面 とトーラス は明らかに同相ではなさそうに見えますが、この証明は実はかなり難しくなります。これをEuler 標数という位相不変量を使って同相でないことを証明してみましょう。
Euler 標数
点と線分と三角形のみを使って、表現される図形を考えます。
例えば、3つの頂点と3本の線分を使えば、(中抜きの)三角形が作れますし、4つの点と6本の線分と4つの面を使えば正四面体ができます。
また、4つの頂点と4本の線分で(中抜きの)四角形が作れますが、これは中抜きの三角形と同相です。
実は、このようにしてできる(カクカクした)図形は、同相ならば、オイラー標数
E = (頂点の数)-(辺の数)+(面の数)
が等しくなるという定理があります。(証明はかなり難しい)
中学校(?)で習うオイラーの多面体定理 ( オイラーの多面体定理の証明 | 高校数学の美しい物語 ) というのは実はこの特別な場合です。
カクカクのトーラス
さて、点と辺と三角形だけを使って、トーラスを作りましょう。
できましたね。
(これ断面が三角形なんですがわかりますかね......)
頑張って数えると、点が9、辺が27、面が18になるので(ここで、辺18面9ではない) Euler 標数は 0 ということになります。
(ただしここでは線と面は少し特殊な数え方をしています。すなわち、上図に書かれている線は(太線でないものも含め)全て辺として数え、辺で分割される二次元領域を全て面と呼んでいます。同じように、下の四角形(中は詰まっている)は一つの平面に乗っていますが、線5本、面2つとして数えています。ちなみに下の二つ同相で確かに になっていますね。)
また、四面体の Euler 標数は 2 です。
このカクカクしたトーラス(上図)とツルツルのトーラス()は同相で、球面()と四面体は同相になっています。それゆえ、もし と が同相ならば、カクカクのトーラスと四面体も同相ということになりますが、これらのEuler 標数は異なるので、矛盾します。すなわち、 と は同相ではありません。やったね!
興味が湧いたらこんなものもみてみてください。
https://en.wikipedia.org/wiki/Hairy_ball_theorem
球面には必ずつむじがどこかに存在するという定理です。これも位相幾何学で証明ができます。すごい!たのしい!
補足
この投稿は、ISer Advent Calender 2018 の4日目として書かれました。 昨日の記事はHelloRuskさんの